雇用シェア(在籍型出向)という言葉を耳にするようになりました。雇用過剰となった企業が一時的に人手不足の企業に従業員をシェアする仕組みです。このコロナ禍にあって、今までの日本の企業の労働力に対する考え方も大きく変容しているといえます。
さて、出向というと、外国人の雇用でも「企業内転勤」という在留資格があります。
「企業内転勤」の在留資格を利用するメリットは下記3点が考えられます。
(1)新しい外国籍の方を雇用するよりも、即戦力として仕事に従事してもらうことができます。
(2)日本の品質を海外の子会社の外国籍の社員に理解してもらうことが可能であり、業務提携強化が期待できます。
(3)「技術・人文知識・国際業務」の在留資格のような学歴要件がありません。
以上の点から、企業内転勤での在留資格で外国人材を呼び寄せようとお考えるになる企業の方もいらっしゃると思います。そこで、企業内転勤の在留資格該当性についてみていきたいと思います。
「日本に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が日本にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う技術・人文知識・国際業務の活動」と規定されています。
つまり、
(1)外国企業でも日本企業でも良いのですが、外国法人の支店の場合は、登記事項証明書など外国法人が日本に事務所を有することを明らかにする資料や外国法人と出向元の法人との資本関係を明らかにする資料等が必要になります。
(2)「転勤」は系列企業内の転勤も含まれます。単なる業務提携関係は「転勤」に該当しないことに注意が必要です。
(3)期間について明確な規定はありませんが、5年程度が一定の目安となります。
(4)単純労働は認められず、いわゆる「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の職務内容を行うことになります。
次に、企業内転勤の上陸許可基準についても確認していきたいと思います。
1.「申請の転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において、技術・人文知識・国際業務の業務に従事している場合で、その期間(企業内転勤の在留資格をもって外国に事業所のある公私の機関の日本にある事業所において業務に従事していた期間がある場合には、その期間を合算した期間)が継続して一年以上あること」及び
2.「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と規定されています。
つまり、
(1)転勤前の業務と転勤後の業務に関連性があることまでは求められていませんが、転勤前も「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事していることは必要です。
(2)日本での「企業内転勤」での在留期間も合算することができます。
(3)報酬の支払いは、出向元、出向先のどちらでも構いません。ただし、一定の労働条件を明示する資料等の提出により日本人と同等の報酬を支払うことを明らかにする必要があります。
現在は人の移動もままなりませんが、自社の経済的展望を鑑みれば、「企業内転勤」の在留資格を利用して優秀な即戦力の外国人材を登用し、海外の市場をより強固なものとすることは今後重要になってくるように思われます。
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